劇団離風霊船 山岸諒子の徒然をつづる雑感ノート 「ラ・ヴィータ・ローザ」です


by rosegardenbel
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アメリカ 

              *  *  *

昨日はアメリカで、すごいことが起きてたんですね。

エンジン停止で飛行不能となった旅客機が、
ニューヨークのハドソン川に緊急着水、乗員乗客155人全員を無傷で救出、
という、映画かい?!と疑いたくなるような事故、うーん出来事?

もうご存知の方も多いニュースでしょうね。
昨日の午後このことを知った時、なんというか、
自分でも疑うぐらいに、心が熱くなったんですよね。

すばらしい機長さんと、助け合って脱出した乗客たちと、
着水した途端にワワッとたかって救助活動をした、居合わせた船舶たちと。
その、一つの隙もない連携の形。

続々と配信されるネットニュースのタイトルを見ているだけで、
涙がこみあげてました。

あたしの好きなアメリカに、ほんっとに久々に会えたから。

あたしはこの8年間のアメリカが、心底大嫌いで、
かの国の生んだ音楽にたずさわるようになったことも、
実はどこかで、大きく抵抗を感じていたぐらいだったのですね。

でも、子どものころ、初めて外国という概念に触れたとき、
あたしの中では、それはイコール、アメリカのことでした。

もう少し大きくなってから、外国にはフランスやイギリスやドイツもある、
と知ったときには、子どもの脳、思いきり???の嵐(笑)
ほんとにビックリしたものでした。

そのぐらい、日本人にとってアメリカって特別な国だったと思います。

たとえ、USA=No.1の為の、大いなるプロパガンダーだったにせよ、
アメリカン・ドリームと、そして、「アメリカの良心」という言葉は、
まぶしく輝くあこがれでしたよね。

アメリカには、善きものがある。
日本人がまねても決して手の届かない、まったき完全な高潔があるのだ。

よりよき大人になるための、努力を支える柱として、
深い無意識の中の純真の根っこには、
いつもあの国のスピリッツがあった気がします。

その思いは見事に裏切られ、輝きの影ばかりが自己主張するようになった、
アメリカ。

なかば固まりかけていた失望を、また裏切ってくれたのが、
今回の出来事だったのでした。

機長さんが、かつて戦闘機のパイロットだったということが、またね、
ちょっと唸っちゃったんですよね。

たぶん、管制塔との最初のやりとりをした時にはすでに、
川への緊急着水という手段が、頭に昇っていたのではないでしょうか。

そうしなければ生きられない。
攻撃の成功と同じぐらい、生還するということを考えている人たち、、、
軍人さんは、色んな意味で、命のプロなんだよな、と、つくづく。

つねづね、人類の最高型は宇宙飛行士だと思っているのですが、
この機長さんも、あたしの中の一等賞の人たちの殿堂入りしました(笑)

どんなジャンルでもそうですけど、
プロフェッショナルとは、冷静と情熱のあいだに居るものなのだと、
今回もまたしても、思ってしまいましたねぇ。

納得の、すばらしいお顔です。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/213007/slideshow/145579
一目惚れしちまいました(笑)

今日あたり出始めている論評では、ヒーローという言葉が踊りはじめ、
こうなってくると正直、ちょっと鼻白む感が生まれたりもするのですが…。

あの国でヒーローという冠で括られるようになった途端、
なにか安いものに成り下がってしまうような気がして。

911然り、人間の持つ本質的な崇高さに変わりはないのですけど、
この正しさを、集団催眠のような一過性の興奮にすり替えてほしくないな、
とは、思っちゃうんですよね。

この8年、厳密には6年ぐらいかな、あの国の大多数の人たちは、
正義の名のもとに、まっ黒なピラミッドの頂点を、
無意識の躁状態で押し上げてきたように見えていたから。

その人々の中に、自分があこがれたアメリカの良心という血脈は、
まだ太く流れているのだと知って、
本当に、足並み揃えてまたその誇りに生きてほしいという、
あたしの希望を取り戻せた出来事だったんですよね。

厳冬のハドソン川といえば、昔、もうひとつ事故がありましたね。

理由は忘れてしまったんですが、氷の浮かぶ川に人が落ちて、
(確か子どもと女性だったような)それを果敢に助けた人が、
自分を救助しに戻って来たヘリからのロープを掴めず、
力尽きて沈んでしまった。

氷水に浸かり続けたから、
その時にはもう、腕を上げることさえ出来なかったんですよね。

出来事のすべてがカメラで撮られていて、その魂の崇高さと、
視聴者でしかいられなかった自分の無力感に、全米が涙した翌日、
なんと、その善意の人は泥棒だったことが分かった。。。

気持ちの整理をどうつけていいものやら、困惑しながら、
あたしはO・ヘンリーを思い出していました。

アメリカって、理屈にならない振れ幅を持った国だ。
強烈にインプットされた事件でしたね。

奇跡の着水という、この素晴らしい出来事を知った晩にみたのは、
ハイリンドの芝居『血のつながり』でした。
100年前のボストンで、実際に起きた尊属殺人の物語。

父と義母を斧で打ち殺した富豪令嬢、リジー・ボーデンの迷宮入り事件は、
英国の切り裂きジャックに匹敵する、アメリカの国有伝説といった感じで、
今なお、かの国のまがまがしい病理を代表する出来事のようです。

ハイリンドの若い面々と多彩な客演陣は、
アメリカという国が持つ、ダブルスタンダード的な深層心理をよく深めて、
秀作に仕上げていました。

いわく、白オンリー、黒は即アウトサイダーとなる。
人ならば、誰もの心の中にその二つがあるのは分かっているけれど、
それを認めることは、たぶん、あの人たちには敗北に通じる、
というような、暗黙の矛盾も抱えている。

一神教への信仰と同質の、規範の偏りは、
人であろうとするものに抑圧を強い、回復不能なひずみを、
そりゃ、生みますよね。

この8年に対世界に貫いたアメリカの姿勢は、
ここからまったく変わっていないように、あたしには見えていました。

あの国には、こういう、寛容、受容ということからはかけ離れた一面、
どうしようもなく深い、無意識の優位性というような闇の一面がある。

ところが、その前の日に見たアメリカ映画は、これと真逆なんですよ。
99年作の『ミュージック・オブ・ハート』。

ニューヨークハーレムの子どもたちにヴァイオリンを教えつづけた、
公立学校の女性非常勤講師、ロベルタ先生の実話です。

真摯な根気と、芸術にたずさわる厳しさを教えることで、
人種を越えた多くの子どもたちが、本物の品位を学び、巣立つのだけれど、
市の方針でクラスが廃止になってしまい、存続への闘いがはじまります。

人の可能性を信じ、平等に認めあい、間違いを正し、善く影響し合い、
大人も子どももみんなで、ひとつずつ希望のはしごを昇る。

その先に勝ち取ったものは、予想を越えた、大きな大きな夢の舞台で。

事実の通り、そうそうたる芸術家たちが本人役で、
この映画のために、とある劇場での大ロケに参加しています。
居並ぶ巨匠たちの演奏シーンは、壮観このうえなし。
ここまでの経緯からいって、みなさん、まず無償出演ですよね。

主演のメリル・ストリープも、
彼女らしいプロフェッショナルな打ち込み方で、なんと全曲を自分で演奏。
ヴァイオリンですよ?!それも、美しい音色で。
ありえない熱意です。

この映画を製作したこと自体が、アメリカの良心といえるような作品です。

というわけで、
ハドソン川の出来事ふたつも、リジー・ボーデンもロベルタ先生も、
ぜ~んぶ、アメリカで起きた実話なんですよ。

そして、もう数日で、
あの国には新しい時代を背負った大統領が誕生する。

あの方の当選も、アメリカの良心と言っていいんでしょうかね。
そう思いたいですけど。

ああ……そうなんです、ちょっと、面白い実験をみたことがあって。

コンピューター上で、善人を白、悪人を黒、どちらでもない人を青、
と設定して、
トータル100の駒を、白25、黒15、青60の割合で配するんです。

これは、おおむね実際の人間社会における資質比率らしいんですが、
確か、社会学か何かの未来予測、とかの実験だったと思います。

こまかい条件づけは忘れましたけど、ともかくオンすると、
画面では青が増えていくんです。

まず、白が、あるところまでどんどん減り出すんですよね、
黒はそれよりはゆるいペースで、でも、2、3コまで減っていく。

ところが、しばらくたつと青がポコポコ、黒く変わって、
またたく間に、圧倒的に黒っぽい画面になっていく。

そのうち、白は一つだけになって、ああー善が消えるー!

それは恐ろしい光景でしたよ。
生き残った黒は、強靱なパワーを持ってるんですね。

で、青は、それは簡単に黒によってっちゃうんです……。

白は踏ん張ってるんですけど、けっきょく黒くなっちゃうんです、
青のレベルを飛ばして。

これが社会の縮図なのかと思ったら、暗澹たる気持ちになりました。

ところが・・・え、えええ???
画面がトートツな変化をはじめます。

赤い駒が出現したのです。

それからは、見る間に黒が減りだして、他の色たちも復活しはじめ、
最終的にもとの数、ただし黒の1コが赤になっている、
という状態に落ち着くんです。

もお、ほーーーーーっっっっ。。。と安堵しましたよ。

この、インプットされていなかった赤は、突然変異なんですって。
プログラミングの予測を越えて、いきなり現れた解析不能なものだそうで。

昨今のアメリカのことを思う時、
あたしはいつも、この絵をイメージしてたんですよね。

つい2年ぐらい前まで、真っ黒にみえてた。
もうダメだと思ってた。
でも、、、赤い駒が、出現、したってことなのか?

オバマ氏とアメリカ国民との関係については、
いくぶん懐疑的にも思うんですけど、
----例の、ヒーロー化の危うさも感じるので

でも、とりもなおさず、今までみた大統領の中で、一番の変わり種として、
彗星のごとく登場してきた人なのは間違いなくて。。。
どうなんでしょうね。

突然変異は、たぶん、本当の危機のときに起こるんですよね。

もしもオバマさんが赤い駒なら、今、本当に危機なんだ、、、って、
そっちの方もこわく感じたりもしますけどね。

我が国も、世の中があまりにもおかしなことになって来て、そのことに、
みんな疲れてきてますよね。

真っ黒とは、まだ思わないけど、
いずれ赤い駒が現れることになるんでしょうか。
そうしたらまた、落ち着いた世界に戻るんでしょうか。
なんか複雑ですね。

ハドソン川の奇跡は、白ですよね。
本当に神様と作り上げた時間だったら、赤的、かもしれないけど。

でも、あのシミュレイションでは、
画面が真っ白になることはなかったんだよな。
白は虚弱なんだな。。。

ああ、だったら、あの川の出来事が青の規範になればいいんだ!
素敵、素敵、そうなったら本当に素敵。
アメリカを越えて、人類の良心、だ。

きれいごともいいところだけど、でも、そう思っていたいじゃないですか。
だって、あの出来事から何かを、自分個人にも欲しいもの。


なんてね。
なーんだかヤケに、
真剣にアメリカと向き合うことになった二日間でしたねぇ。
ここまで長文書いたんだから、
きたる新大統領の宣誓式はライブで見たる。(笑)


              *  *  *
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by rosegardenbel | 2009-01-17 00:00 | ラ・ヴィータ・ローザ