劇団離風霊船 山岸諒子の徒然をつづる雑感ノート 「ラ・ヴィータ・ローザ」です


by rosegardenbel
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或る夜のできごと 3

               *  *  *

面白いことがありました。

赤坂にいったのですね。
RGの、微笑みの振付け助手ユーちゃんの芝居があって、
しかも舞監が今井さんなので、これはなんとしても外せなかったのです。

実は今井さんには、早晩お詫びをしなければならないゆえがあり……

とある、おとぼけ事件がありましてね、打ち上げ翌日に。
今井さんには、一生忘れがたかろうご迷惑をおかけしてしまっていて、
しかもその下手人がユーちゃんだったので、
今となっては大笑いの事件でしたけど、
ガン首揃えて、ちゃんとごめんなさいをしておかないと、
で、その街に向かったのです。

・・・夜の赤坂は、もしかしたら----あたしがちゃんと頑張れば、
未来のどこかで、自分の新しいフィールドになるかもしれない街です。

あらためて眺めて、ほんとに空気がシックだよな~、
あたしは、この街の夜にふさわしい何者かになれるかしら、
なれたらいいな、なんて、
いろんな想いを馳せながら歩いて、
ゆるいカーブをまがったら、
急にうわ~っと、流麗なピアノのメロディが聞こえてきました。

なんでこんないい音が、道ばたにうつくしく?
驚いたんですけど、
どうやら向かいの建物の中にピアノラウンジがあって、
その生演奏を、スピーカーで外にも聞かせているらしかったのです。
流れていたのは、AS TIME GOES BY 。。。

----そんな想いを抱えて久々に訪れた街で、
この曲に迎えられた偶然が嬉しかった。
ついさっきまで、電車の中で歌詞を広げていた、
今、あたしが暗譜に余念のない曲だったから。

なんときれいなピアノの響き。。。
この街の、この片隅で、夜毎くりひろげられる、ゴージャスな音の魔法。
いい音楽は、いいお酒以上に人を酔わせることができるのね。

あまりにもスタンダードすぎて、
どこかでチョットつまらなくも感じていたこの曲だったけど、
こんなに、人をときめかせるメロディだったのか。。。
なんだか自分に、
新しい耳がついたような気分になりながら、
石だたみの道に広がる、甘い空気に送られて、劇場へ行きました。

行ってびっくり。
ユーちゃんたら、ある意味主役?
芝居も格段にうまくなっていて、相変わらずの華満開で、
客席のすすり泣きまで誘っちゃって、
すっかり愛されてました。
よしよし。。。親心全開で、エラそうにご満悦なあたし(笑)

終演後、エントランスの外にいると、
冷えた外気の中を、文字通り身体から湯気をあげて走ってきたユーちゃん。
はふはふしながら、笑み満面で、まっすぐあたしのところに来てくれた。
い、犬みたいだなぁ(笑)

返す刀で、
プレイボートのいなせな舞台監督に会わせてもらいました。
ひと仕事終えて、楽屋口の目立たぬ隅で煙草をふかしている今井さんは、
ええ、相変わらずの男っぷりでした。

一ヶ月ぶりの再会に、おお~って、素敵なハグを交わしあい(笑)
その独特の、大きなあたたかい空気に包まれながら、
あ、あたしはやっぱり諒子さんなんだな、と思いました。

今井さんが感じている諒子さんは、
自分の日常の中では、遠くなりそうになってたりもするんですけど、
でも、ちゃんと、そうだった。
プロ、なんだ、あたし。
この人とは、もはやしっかり信頼関係が定まっていることを実感して、
また、力をもらえました。

同じ思いは、終演後のロビーでもいただいていました。
見知らぬかわいらしい女性が、お声をかけて下さったのです。

13年間、あたしの舞台をずっと見てきて下さっていた。
初めて見たのは12才の時だって、、、うわ~、そ、そうなんだ(笑)

その人の、キラキラとした瞳の輝きの中に、
自分がしてきたことを見せてもらえました。

あたしは、自分が知らないところで、
長い時間、
こんなに美しい瞳に守ってきてもらっていたんだなぁ、、、

その笑顔は、なにより尊い、芝居の神様からのいただきものです。
ありがとうございます。
あたたかく、、、なりました。

今日の観劇は、なんだかとっても刺激的で、
いってよかったな。
希望に後押しされたような気持ちで、また地下鉄に乗りました。
座席に座って、来た時と同じように歌詞カードを広げようとしたら、
すぐ隣に座ってきた人が、ふんふんふんふん、鼻唄を歌っています。

声から察するに女の人、なのに、電車で鼻唄……もしやして、
あぶないひと?
み、見ないフリ見ないフリ。
ちょっと怖くなりながら、歌詞カードを広げて集中を試みると、
いきなり言葉が飛んできました。
Are you singer?

なにせ英語の歌詞を見ている最中だったので、現実の言葉とは思えず、
なのよねー、シングはシじゃなくてスィ、
そしてあたしは末尾のRの納め方に、難アリなのよねー、うーん、
とか、頭の中で勝手に反芻していたら、また同じ言葉が。
Are you singer?

へ?
あ、あたしに聞いてるんかいっ?

右隣をふりむいたら、
ちょ~っと頭のユルんだ近郷近在のおばちゃんかと思っていたその人は、
金髪碧眼の、美しい異国のご婦人でいらはりました。
びびびっくり。

そーね、ここは赤坂、そんなお方に遭遇する率も、
ほかの街よりはいと高し、、、だけどっ、
異人さんに、こんな間近い距離でいきなり話しかけられたのは、
はじめてっっっ。
どえどえどえっ?!

あたしの動転をよそに、
とても知的な、けれどあったかい雰囲気をかもし出すその人は、
AS TIME GOES BY ・・・
歌のタイトルをきれいな指でなぞると、
眉をピュッと動かしてお茶目に笑いながら、
この、自作の歌詞カードのスペルミスを指摘してくれました。

「ここはEじゃなくてOよ~、あとこれはIじゃなくてLね」
「なんですよー、慌てて打ったからプリントしてみてあたしもびっくりで」

なーんて会話が、
交わせるわけありませんあたしにっ!

言ってることは、そこだけは分かったけど、
他はまったくちんぷんかんぷん#$0$*&@&’%$%&……???
Noーっ!
でも、せっかく声をかけてき下さったその方と、このままムンとするのは、
やだなぁ~。。。

あ、そうだ、聞いちゃえ、この際、本物の人に、発音。

たまたまここ数日、楽天団の稽古場に伺っていて、
休憩中、翻訳家のれいさんに、
どうしてもうまくできない発音をみてもらってたりしていたのですが、
れいさんの音の美しさに、ほわ~っ、、、
それがどうしても再現できず、
本気でノバ、通わないとっ、おおおおーーーーん!(T T)
と、たった一言に撃沈して落ち込んでいたところだったのです。

You must remember this ~♪

あたしが歌いながら、リメンバー?ルィメンバー?
と、その方の目を覗き込むと、その人はAh~と分かって下さって、
正しい発音を答えて下さいました。
そうして、そこから先、一行ずつを一緒に歌って、
きれいな発音へと、やさしく誘導して下さったのです。

とても、お上手でした、歌。
あったかい、ゆったりとしたイイ声で。。。
もしかしたら、
あたしにいきなりシンガーかと聞いて来られたぐらいだから、
ご本人もそんな関係の方だったのかな。

ふた駅だけの、つかの間のレッスンでしたけど、
楽しかった。。。
言葉が通じなくても、気持ちや、その人の人となりが、
手に取るように伝わってきて、
たぶん、あの方にも、あたしのことが分かってもらえた気がします。

何か、くすぐったいような、同じ繭でふわ~っと包まれたような、
不思議な安らぎをもらえました。

歌って、すごいな。
世界の見知らぬ人とつながれる。

表参道で一緒に降りて、エスカレーターを昇りながら、
あい、きゃん、のっと、すぴーくいんぐりっしゅ、
と言ったら、
あたしはジャパニーズが全然ダメなのよ~、と言ってたみたい、
Ha-ha! と笑ってらした。

別れ際、改札を抜けていったその人の背中に、
Thank you! Thank you very much! と、
これだけは、度胸決めて心から伝えられる言葉を送りました。
後ろ手に手を振って、その方はもう、ご自分の時間に戻っていかれました。

二度と会えないひと。
でも、一生忘れられない。
だって、赤坂で、AS TIME GOES BY で、
出会えた、遠い異国のひとだから。

一昨年の初冬の、傘の人との出会いが、
貴方と嘘というホンに結ばれたように、
この出会いも、きっとあたしのこれからに響く。

初めのはじまりに、
時の神様が、ペッと胸につけてくれた“大丈夫メダル”みたいな、
理屈を飛びこえた、自信?うーん、支え、静かな輝き。
また、いただけました。

がんばろ。
英語も本当に勉強しよう。
あなた発音きれいよ、と言って下さった(ような気がした)し。
楽しいジャズを、歌っていけるように、、、うん、頑張る。

だってね、自分でびっくりだった、
Are you singer? と聞かれた時に、No とは、
言わなかったんだもん、あたし。
あら、こんな大きな野望、すっかり自分の芯になってたんだわ……
われながら唖然、だった。

As time goes by・・・

  愛に生き 愛に闘うか それとも ただ死んでいくか
  世界はいつでも 恋するものたちを迎えてくれる
  時がうつり行こうとも

この歌に、小さな思い出ができました。

劇場とメトロで声をかけて下さった、二人の女性。
知らない人とふれあうって、なんて素敵。
あたしのその時間は、本当に豊かだった。
希望を、いただきました。

愛する人から愛される悦び。
奇跡。せつなさ。ときめき。魅惑。

あたしだけの恋の歌を、歌っていけたらいいな。
出逢いのすべてを華にして。

As time goes by・・・時のたつままに、ね。


               *  *  *
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by rosegardenbel | 2008-02-04 00:00 | ラ・ヴィータ・ローザ