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劇団離風霊船 山岸諒子の徒然をつづる雑感ノート 「ラ・ヴィータ・ローザ」です


by rosegardenbel
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或る夜のできごと 2

               *  *  *


先日、ゆえあって夜の都心に出向きました。
相変わらず、普段は大きくて履けない靴がまだピッタリな足ですが、
そんなこと言ってもいられない天王山の面談だったので、
気合いは一発歩みは遅く、をモットーに地上へと上がると、げげ、
雨じゃん!

うっそ~、家を出た時は降ってなかったのに。
もう今日はこのまま上がると思ったのに。
うぇ~ん、郊外に住んでると天気が違うから困るのよね。
けっこう降ってるし…でも今、走れないしな…
しょーがねーこのままお店までゆっくり歩いて行くか。

雨に濡れながら先方に電話して、もう到着していることを確かめ、
あとちょっとで着きますからと切って目を上げると、
なんだかすぐ前を行くオジサンが、
傘の中からあたしの顔をマジマジと見ている。
酔っぱらってるのかな?
うわヤダなぁ~、何か言いたげな表情…絡まれる?あたし?
大事な話の前に気分悪くなりたくないよぉ、と思ってたら、
スッ。。。

スッ?
なんと、あたしに傘を差し掛けてくれたのです。
「え?や…すいません…あの…」
「僕達はこの道の正面に入るから、そこまでだけどね~」
オジサンの声で、前にいた二人が振り向いた。
ビジネスマン三人連れだった。
そう、なんか、サラリーマンという形容では当たらない、
よく見ると、仕立てのいいコートを着た品格のある風情の人たちだった。

「おまえの方がデカイ傘なんだから入れてやれよ」
オジサンに促されて、30代と思しき男性が歩みを止めて、
長身を納めてもなお余裕のあるその大きな傘に、あたしを入れてくれた。
「すみません。助かりました」
「今日、一日雨だって言ってましたよね」
「あ、なんですね。あたしテレビ見ないんで…」
「ああ、なんか分かるな」
「ええ?」
「いや、いい意味ですよ。僕らだってこんなことしたことないですから」
「…はあ。」(なんだかよく分からないまま赤面)

結局、後は角を曲がるだけというところまで、雨に濡れずに済みました。
「まだ歩きますか?これ、持ってきますか?」
別れ際にはもう一人の若い人が、気遣って声をかけて下さいました。
「いえいえ、すぐそこですから。ホントにありがとうございました」

び~っくり~。。。
なんて親切な男性たち。
もしかしたら、場所柄IT関係の人たちだったのかもしれません。
今のご時世で、明らかに勝ち組と言ってよさそうな、
物腰にも持ち物にもゆとりのある、
それでいてジェントルな緊張感の漂う三人でした。

久々に、いきなり知らない人から親切にされて、
とても、とても、心がきれいになりました。
サッと一拭き、心の気負いも拭われたような、
不思議な落ち着きを貰えました。
ありがとうございました。
もう二度と会うことのない人たちだけど、お仕事の成功を祈ります。
心から。

この、ちょっとビックリな良い出だしのおかげで、
固い緊張はすっかりほぐれ、どこか華やいだ気分で赴くことが出来て、
目的の面談も成功しました。
Rose Garden vol.3への、オファーのお返事を伺いに行ったのです。
その晩が一件目の交渉。
これから何件も、色んな方とお話させて頂く日々になります。

幕開きに、こんな素敵なエピソードに彩られるなんて…
vol.3への吉兆のような気がしています。
なんだかずっと、あの大きな傘に守られていくような。。。

お店を出ると、さっきの雨はウソのように上がっていました。
忘れられない夜になりました。

               *  *  *
by rosegardenbel | 2006-11-22 00:00 | ラ・ヴィータ・ローザ