劇団離風霊船 山岸諒子の徒然をつづる雑感ノート 「ラ・ヴィータ・ローザ」です


by rosegardenbel
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白蘭の匂い、薔薇の夢

               *  *  *

珍しく小説を読んだ。    

ある役者さんとのお話しの中で出て来た、連城三紀彦の短編。
その人は、この原作で二度、舞台を踏んでいた。
二度目は、単なる再演ではなくみずからの企画として。
「やり残しがあったから」と言っていたけれど、
そんなに愛した芝居…
連城三紀彦は嫌いじゃないし、どんな役をやったのか興味も持ったし、
本を取り寄せてみた。

芸の世界が舞台の、壮絶な人間ドラマらしいけれど、
読み始めて2ページも行かない内に、
その人が誰を演じたのかすぐに分かった。
まるで物語から抜け出て来たかと思うぐらい、
主人公の描写はその人にそっくりだったから。
だからこの本を選んだのかしら。

あたしは小説を読むと、いつもしばらくその世界から抜け出せなくなって、
それはチョット苦しいことでもあるので、
普段の読み物は、ほとんどがノンフィクションばかり。
久しぶりに物語世界に埋没する陶酔を感じながら、それとは別に、
軽い驚きにも見舞われていた。
行が進んでも、主人公のイメージがその人からまったくブレない。
それゆえに、物語の中の自分の知らない世界がリアルに立ち上がって、
目の表情一つ、息遣いに至るまでが容易に感じられる。

なんだろこれ…
不思議な実感を持ちながら読み進んでいたら、
とんでもない箇所に行き当たった。
え、この名前…?!
なんと、主人公の芸名として、その人の実名が出て来たのだ。
字は違うけど…偶然?!それがキッカケで選んだの?
いや、それにしても…
ドキドキしながら、さらに細かく描写された主人公の居住まいを追うと、
書かれているのは紛れもなく、自分が見たことのあるその人の姿。
そして、出身地に触れた箇所に至って、ついに確信することが出来た。

コレ…本人だ。
あの人の姿をモデルに書いた本だったんだ。
だから二度目を自分の手で打ったんだ…。
驚きすぎて震えがきた。
そんなこと一言も言わなかったから…
あたしがこの本を手に入れなければ、まったく知らないままに終ってて…
そんな有り様がまた、物語の主人公そのままで…
ヤダ、もお、、、絶句。

連城三紀彦に本を書かせた役者。
そんな絢爛たる事実を語らない役者。
軽く、嫉妬した。
いい本だった。
ちょっとない、烈しい愛の物語でした。
その人が、自分の掌の中で息づいている、不思議。
これからも、本を開けばいつでもそこにいる、不思議。
うれしく、喜ばしく、心踊らせながら、
なぜかお手上げにせつなくなった。

綾なす美文を魔術のように繰り出す、この作家が捉えたその人は、
あたしが感じたその人と寸分違わぬ、少し気険な匂いをさせていた。
そうして、会う度にいつも思っていた、
無頼の中の品性と言ったような、端然とした姿勢も、
やっぱり書かれていた。。。
自分の見る目に、チョット自信持った(笑)


何日か前、『エクスタシー』のあたしの娘ステイシ-からメールが来た。
つかのま、鹿児島に帰省していたらしい。
その中で出て来た話。。。

 そうそう、実家に帰ったら、うちのお父さんがね。
 あの母親の役をしてた人は、いくつなの?とか、
 結婚はしてるのか?子供は?とか聞いてきて。
 なんでそんなこと聞くのかな~?って一応なんとなく答えたけど、
 変なの~って。
 で、よくよく考えたら、ちょっと好意を持ったのかな~?wwって。
 あははは。
 よっぽど突っ込もうかと思ったけど、
 そばにお母さんがいたからやめましたww
 小さな恋かしら、お父さん!
 58才!!
 百万本の薔薇かしら、お父さん!

お父さん!
好感が持てる人だーっ。。。(T T)じーん(笑)
鹿児島からわざわざ娘の舞台見に来た、そこにも驚いちゃったけどネ。
でも、
嬉しい。
『エクスタシー』はまだ死んでなかったのね、、、と思って。


小説の中。
舞台の上。
形は違っても、人に自分を晒すのは一緒。
そうして、誰かの心に小石を落とすのも一緒。
波紋は烈しくか、穏やかにか、広がって広がって、、、
やがておさまるのか、
いつまでもさざめいているのか、
それは分からないけど、
役者であることをまた一つ考えた、出来事、二つ。


               *  *  *
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by rosegardenbel | 2006-10-05 00:00 | ラ・ヴィータ・ローザ