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劇団離風霊船 山岸諒子の徒然をつづる雑感ノート 「ラ・ヴィータ・ローザ」です


by rosegardenbel
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黄金の輪

              *  *  *

今年の舞台出演は『クロスゼロ』1本。
だと思っていたのですが、ここへ来て急転直下、
夏の終りに外部に出演させて頂くことが決まりました。
あたしもビックリの展開です。
思いッきりウソつきになってしまいましたネ、ゴメンナサイ。
先のことは軽々に言ってはなんねえ、と反省しましたです。m(_ _)m
2006年は日豪交流年なのだそうで、
ドラマチック・オーストラリアという企画にお誘い頂いたのです。
詳しくは、きっとまた嫌と言うほどここに書く事になると思いますが(笑)
参加するのはオーストラリアの現代戯曲のリーディングです。

というワケで、シドニーのオペラハウスの夕景でございます。
    
今回の企画にはぜんっぜん関係ないんだけどねー、気は心、
まずはそこからでしょー。だはは。

お誘い下さったのは、小劇場界の大先輩“楽天団”主宰の和田さんです。
あくとれの小屋主さんでもいらっしゃいます。
あくとれと言えば、はい、『かわいい幽霊』を上演させて頂きました。
大好きな、思い出の劇場です。
和田さんのお芝居には、よく伊東センセイが出ているので、
そんなこともあって、遠目にはよく存じ上げていたのですが、
実際、直接お話しさせて貰ったのは、去年の春。

『甘い生活』の仕込み中に、ロビーであたしと喋っていた知念さんが、
突然、入り口のガラス扉を開けて「和田!」と呼び掛けて、
通りすがりの足を、およっ、と止めて振り返られたのが和田さんでした。
うららかな春の陽が降り注ぐ通りで、立ち話するお二人の豪華な顔ぶれに、
浮き浮きしながらチャッカリ便乗して二言三言、お話させて頂いて。
知念さんが呼び捨てにする人がいるなんて…と、
とても印象に残った、なんだか嬉しいワンシーンだったのでした。

和田さん、なんかりょーこに興味あるみたいよ、とは、
数年前に伊東さんから聞いてはいて、でも具体的なお話もなかったので、そっか、と勝手に納得していたのでしたが、
『クロスゼロ』の終演後にお見かけしたので御礼に伺ったところ、
「りょーこちゃんて、ジャズをやってるの?」
なんて、いきなり世間話になったかと思う間もなくトントントン、と、
今回のお話が進んでしまったのです。
ほぼ初対面の目上の方に、のっけから苗字でなく名前を、
しかもちゃん付けで呼ばれるなんて、なんて…なんて…快感っ。
ヤられちゃいました。すっかり。(笑)

恐そうな人だと思ってたのに、全然やさしい方なので驚きました。
そのうえもっと驚いたのが和田さんの、知念さんの呼び方。
「ちねんちゃん」
・・・ぶっタマげました。
後でメールで聞いてみたら、和田は大学時代からの友人なんですよ、
ってことだったので、ホントに古い仲好しさんなんだぁ~、
お互いの呼び方に関係が見えて、微笑ましくなっちゃいましタ。
あたしとは無関係だったはずの、お二人の過去からの流れが、
こんな風に自分と結びついてくる不思議さに、
なんだか守って貰えてるような気がして、
このお話はとっても嬉しいものになったのでした。

そして、あたし自身の過去もまた、
今回のお話とは、思いがけぬ感慨深い絡みがあったのです。
ドラマチック・オーストラリアの企画の上演は、
この春からもう始まっているのですが、
そのパンフレットで和田さんが演出された作品の主催先を見てビックリ。
高校時代に、山深い片田舎の母校へ、
芸術観賞会で来て下さった劇団だったのです。

演目は『奇跡の人』。
そう、ヘレン・ケラーのお話です。
決して鑑賞態度が良いとは言えなかった周囲の様もまるで耳に入らず、
夢中で見続けた本物の演劇でした。
あの時に、あたしはずっと芝居をやって行きたいんだと、確信した、
大きな大きな出会いでした。
終演後、わたしたち演劇部との懇談会に出て下さった俳優さんのお名前は、
なぜかくっきりとインプットされたまま、忘れる事はありませんでした。

あれから25年。
今では自分も、学校に呼ばれて演ずる側になった。
生徒さんの前に出るたびに、心のどこかであの時の『奇跡の人』の絵が、
浮かんでは消えて行く、そんな繰り返しをしてきた気がします。
この世界に入ったからには、いつかは関わる事もあるかもしれない、
と思いながら、あちらは新劇、ここまで来ると畑違いの線引きは明確で、
むしろ遠い存在になったと思っていたのに。
あの俳優さんは…、
ドラマチック・オーストラリアには参加されていないようだけど、
何度も和田さんの演出を受けていらっしゃるようです。
細い細い糸を繰り出し続けた糸車が、今になってひと回りしたような、
何か、節目のようなものを感じます。

劇団のサイトで見つけたあの方のお名前は、
“初老の紳士”という役の処にありました。
これがご縁で、もしかするとお会いするような事も起きるかもしれない…。
30代のあなたが、25年間、ずっと心に生きてきましたよ、と、
伝えたいような、伝えたくないような。。。
あたしの事を、ずっと覚えていてくれる生徒さんに、あたしも、
出会っているのかもしれない。
今、学校を回っているリブレのメンバーの事を思うと、
こんなあたしがいることを、確かな事実と支えにして欲しい、
そんな思いも浮かんできます。

オーストラリアには、幼稚園からの竹馬の友が嫁に行っています。
イギリスの人と結婚して、地上の楽園都市パースで幸せに暮らしています。
・・・一つ芝居の世界に入るたびに、あたしにとっては、
それはもうフィクションではなくなります。
絵空事が、事実生きた証しになるのが、役者なのだから。
親友が現実を活きているかの国の人に、あたしはこれから成るのです。

気がつけば、一つずつの縁の輪が、
ただ“オーストラリア”というキーワードの元に、
二重三重にあたしを取り巻いて、こんなに太い輪郭を持ち始めている。
そうして、見も知らぬそれぞれの人を結んでいるのは、
あたし…なんだ。
人と生きていく、って、こういうことなのかもしれない。
役者じゃなかったら、ずっと気付かないままだっただろうか。

なんかね、
頑張ろうと思ってマス。。。

              *  *  *
by rosegardenbel | 2006-06-18 00:00 | ラ・ヴィータ・ローザ